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アフェレシスが適応となる疾患

 アフェレシスは体外循環によって血中から病気の原因となる液性因子(抗体、炎症性サイトカイン、有害代謝物質、中毒物質など)や細胞(リンパ球、顆粒球、ウイルスなど)を除去し、病態の改善を図る治療法です。また二次的効果として免疫能の賦活や細胞機能の回復(対外免疫調節・免疫修飾)が生じ、血液レオロジーや循環動態が改善します。そのため、様々な代謝性・中毒性疾患、自己免疫性疾患などの難治性炎症性疾患にも適応が広がっており、さらにはウイルス性疾患にも適応が広がっています。そのため現在知られているだけでも下記の表1に示すように多くの消化器疾患、皮膚疾患などから神経疾患、臓器移植、敗血症など多くの疾患にその適応が広がっています。それぞれの疾患に応じた選択的吸着剤を用いた血漿浄化療法から選択的に顆粒球やリンパ球を除去するや血球浄化療法などをはじめ様々なアフェレシスが開発されてきています。
 神経疾患においても臓器特異性の自己抗体が出現する重症筋無力症、B細胞の単一クローンの異常増殖で生じたM蛋白に伴って発症する多発神経炎、代謝物質が蓄積するRefsum病などでは病院物質が特定されアフェレシス治療は理論的であります。しかし神経疾患の多くは病因物質が特定されておらず病態も不明であることが多く、1986年のNIH Consensus Conferenceでは重篤な神経障害があり、発症して数週間を経ても症状が改善しない場合にはアフェレシス治療を試みてもよいとの合意が得られています。
 これら以外にも今後、適応となる疾患が今後増えると考えられています。

表1 アフェレシスが適応となる疾患

肝疾患 劇症肝炎
重症肝不全
術後肝不全
慢性肝不全
肝移植
ウイルス性肝炎(C型肝炎など)
腸疾患 潰瘍性大腸炎
クローン病
腎疾患 急性進行性糸球体腎炎
一次性ネフローゼ症候群
  巣状糸球体硬化症
  微小変化型
二次性ネフローゼ症候群
  IgA腎症
  紫斑病性腎炎
  クリオグロブリン血症
  腎アミロイド
  骨髄腫腎
  ループス腎炎
  移植腎に再発した巣状糸球体硬化症
膜性腎症
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)
糖尿病性腎炎
腎移植
腎移植後慢性拒絶
膵疾患 重症急性膵炎
循環器疾患 心疾患(家族性高コレステロール血症による冠動脈硬化症)
慢性閉塞性動脈硬化症
バージャー病(閉塞性血栓血管炎)
家族性高コレステロール血症
呼吸器疾患 Goodpasture症候群
特発性間質性肺炎(肺線維症)
内分泌疾患 バセドウ病
橋本病
リウマチ・膠原病 全身性エリテマトーデス
抗リン脂質抗体症候群
ANCA関連血管炎
  顕微鏡的多発血管炎
  Wegener肉芽腫症
  アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)
関節リウマチ
悪性関節リウマチ
多発筋炎/皮膚筋炎
全身性硬化症(強皮症)
ベーチェット病
混合性結合組織病
皮膚疾患 自己免疫性水疱症
  尋常性天疱瘡
  落葉状天疱瘡
  水疱性類天疱瘡
  後天性表皮水疱症
中毒性表皮壊死症
自己免疫性蕁麻疹
掌蹠膿疱症
乾癬
血液疾患 過粘稠度症候群
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
血液型不適合妊娠
神経疾患 中枢神経系脱髄性疾患
  多発性硬化症
  Balo同心円硬化症
  Bickerstaff型脳幹脳炎
  Rasmussen脳症
  急性散在性脳脊髄炎
  HTLV-I関連脊髄症(HAM)
末梢神経系脱髄疾患
  Guillain-Barre症候群
  Miller-Fisher症候群
  慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチー(CIDP)
多発神経炎
  Crow-Fukase症候群
  異常タンパク血症による多発神経炎
  クリオグロブリン血症性多発神経炎
神経筋接合部疾患
  重症筋無力症
  Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)
傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurologic syndrome)
  辺縁系脳炎
  傍腫瘍性小脳変性症
  傍腫瘍性感覚性ニューロパチー
代謝性疾患 Refsum病
Isaacs症候群
Stiff-man症候群
感染症 エンドトキシン血症
敗血症
多臓器不全
その他 薬物中毒
造血幹細胞移植
血液型不適合移植